社会共創促進センター・SDGs事例集

農学部

堆肥施用による土壌とイネにおける窒素固定の活性化

担当:農学部・応用生命化学科・前田勇

水稲の研究圃場において,牛糞堆肥あるいは化学肥料の長期連用が土壌とイネの生物学的窒素固定活性と細菌叢に及ぼす影響について明らかにしました。窒素固定細菌は大気中の窒素からアンモニアを作り出すことができます。牛糞堆肥区における土壌細菌叢は化学肥料区と比較し,窒素化合物であるアンモニアと亜硝酸の酸化細菌の存在比が減少しました。その一方で,牛糞堆肥区では細菌叢の多様性や窒素固定活性は高くなりました。牛糞堆肥の長期連用によるこれらの変化は土壌細菌やイネ内生細菌の窒素固定能を向上させ,その結果としてイネにおいて窒素固定を介してより多くの窒素が補われることを示唆しています。イネにおける窒素固定の寄与が増加することで化学肥料使用量の減量に結び付き,持続可能な農業に貢献できる可能性が示されました。