研究概要
メンタルヘルス,特に認知行動理論に基づく抑うつの発症予防についての基礎研究および予防プログラムの開発・評価を行っています。私が最も力を入れている「一次予防」は,現在特に日常生活に支障のない方を含め,すべての方を対象とする発症予防になります。予防プログラムの実践においては,「現時点で特に困っていない」方が多くを占めるため,参加される方々のモチベーションの喚起・維持が重要となります。また,抑うつ予防の目的は,現時点での抑うつの程度をさらに低減させるというよりも,将来にわたって抑うつを予防するスキルを養成し,それらを日常生活に無理なく取り入れることによって,結果的にメンタルヘルスの向上に繋げることにあるといえます。私の研究では,予防プログラム実践の効果を統計的に検証して終わりではなく,参加者の方から報告される「負担感」に対しどのようなアプローチが可能かを検討しています。その一環として,最近は,日常的読書の心理効果に着目し,マンガへの接触を通したメンタルヘルスへのアプローチにも興味をもっています。
教育・研究活動の紹介
心理学における理論や実践は,欧米における研究知見を基に展開されているものが多くあります。しかし,当然のことではありますが,それらがそのままどこででも適用できるわけではありません。私の研究テーマの一つに,抑うつ関連認知の内容や機能に関する基礎研究がありますが,それらにおいても,欧米の知見とは一部異なる独自の結果を得ています。マンガ読書効果の活用もそうですが,そこに住まう人々の文化や習慣,また個々の特性とのマッチングを重視した研究を行っています。最先端を走る研究が重要であるのと同様に,積み残されている課題についても,教育研究を通して実直に取り組むことを大切にしています。
今後の展望
抑うつ予防に関しては,これまで大学生を対象とすることが多かったのですが,より幅広い世代の方々とも取り組んでいきたいです。また,効果指標等に使用する心理測定尺度の開発も行っておりますので,心理査定に関して,新たな分野融合研究にも関わりたいと思っています。
社会貢献等
出前授業や公開講座,企業のメンタルヘルス講座などにおいて,ストレスマネジメントや,日常・仕事に活かす心理学の知識とその活用などについて講演しています。