研究概要
農業経営は、それ自体も1つの組織ですが、いくつもの組織に属していることが一般的です。水田を利用する際の水利組織のように必要不可欠なものもあれば、機械を有効活用するための共同利用組織のように任意のものもあります。任意のものは当然のことながら、組織の提供する機能を利用した方が独力でやるよりも有利になるから加入するのですが、必要不可欠な組織は有効に機能しなければ個別経営の足を引っ張ってしまいます。また、有効に機能を発揮していた組織も、環境の変化に対応しなければ役に立たなくなります。機能を発揮し続けるために、組織運営は絶えず見直しを求められます。組織の運営と機能発揮の関係は、唯一の正解がない複雑な課題です。機能を発揮するための組織運営に重要な要素として、理念やビジョンといったことに注目しています。
教育・研究活動の紹介
話を聞いていて信念のようなものを感じられる経営者の創り出すものは、モノであれサービスであれ、愛用したくなります。ちょっと話をするだけでそういうオーラを感じてしまう人もいますが、時間をかけて話を聞かないと引き出せないのが普通です。型どおりの調査だけではなく、じっくり話を聞くことによって経営判断の奥深さに触れることができるのです。
奥深い経営判断も、原理は大抵シンプルな基本理論です。しかし、基本を徹底するには障害が多く、一方でその場しのぎの方が安易だし、流行り物の誘惑も大きいため、邪道に流されがちです。話としても、そちらの方が盛り上がったりします。ですから、奥深い話を聞き出すためには基本的な理論を身につけた上で、話の本質を敏感に感じるスキルが求められます。ですから、本をじっくり読んで理論を学び、本に取り上げられているケースや自分の体験と結びつける作業を繰り返すことを、大切にしたいと思います。
今後の展望
農業経営や農村組織の理念形成過程を、伝記・社史編纂作業という形で調査することで、成果の還元と濃密な調査の両立を図れないかと考えています。
社会貢献等
農業教育機関や農業協同組合の研修で、農業経営管理に関する講義を行っています。農村振興に取り組む組織の運営について調査を行い、コンサルタントによるアドバイスや自治体による補助事業につなげることもしてきました。コロナ禍前は農村振興活動の行事に学生と一緒に参加したり、運営を手伝ったりもしていました。
