研究概要
現代のIC産業を支えるフォトリソグラフィ技術は極めて微細な構造を半導体基板上に大規模に形成することを可能にしており、これを用いることで光回路と電子回路を融合させた先端デバイスを小さなチップ上に高密度に集積することができます。シリコンを微細加工して光素子を作る技術や分野は特にシリコンフォトニクスと呼ばれます。本研究室ではこのシリコンフォトニクス回路を構成する光導波路や受光器、回折格子といった光学素子や、それらと電子回路を組み合わせた応用デバイスを研究しています。
一般的な光パルスの波形測定器は通常、数10センチ角、どんなに小さくても数センチ角の大きさですが、本研究室ではシリコンフォトニクスを用いて数ミリメートル四方の超小型なチップに集積可能な光パルス波形測定器を研究開発しています。光短パルスの応用技術は近年急速に発展しており、本研究はそれらのパルス光源開発や維持校正に大きく貢献すると期待されます。現在は、光短パルスのさらに詳細な特性を計測するための超小型パルス測定器デバイスを研究しています。
教育・研究活動の紹介
研究活動においては、これから製作するデバイスの性能予測、および最適化のための計算シミュレーションや、デバイスの設計、実験系の構築、実験、収集したデータの分析、考察など、目標達成に向けて様々なことを行います。学生たちは研究テーマによってこれらすべてに触れることもあれば、その一部に集中的に携わる場合もありますが、いずれにしてもそれぞれの活動において、計画から実行、考察、改善のプロセスを通して論理的思考と他者への説明能力を身に着けることを目標として教育しています。また、研究活動だけでなく、光学基礎に関する専門書を読んで当番制で講義する形式の勉強会を行い、光学に関する基礎学問の修得にも努めています。
今後の展望
現在研究しているパルス波形測定器デバイスの実用化を目指し、そのために、可測定帯域幅や時間分解能の向上、測定可能な波長領域の拡大など、パルス波形測定器としての汎用性の向上に取り組んでいます。また、本パルス波形測定器ならではの新たな応用方法を模索しています。本パルス波形測定器が実用化されれば、光パルスアプリケーションをどこでも常時監視できるようになり、製品メンテナンスのコストダウンなどに貢献できると期待されます。
社会貢献等
特許
近藤圭祐:光パルス計測器、光パルス計測方法及び光パルス計測プログラム,特願2022-007380,特許出願人 :国立大学法人宇都宮大学,2022.1.