研究概要
【微生物のコミュニケーション様式の解明と制御】
一部の微生物は、シグナル分子を交換してコミュニケーションをとることでバイオフィルム形成や毒素生産などを一斉に活性化します。バイオフィルムは虫歯や日和見感染症、植物の病気、水処理の分離膜閉塞などを引き起こすため医療・農業・食品・水処理分野で問題となっています。微生物同士のコミュニケーション様式の解明に加えて、抗生物質(ペニシリン等)の分解酵素のシグナル分子分解活性や、環状オリゴ糖のシグナル分子包接能を利用した微生物間コミュニケーションの人為制御を行っています(図1)。
【排水中ホルムアルデヒドの微生物分解】
化学工業、紙加工品製造業、繊維工業などで排出されるホルムアルデヒド含有排水(ホルマリン)を対象とした省スペース・短時間でのホルムアルデヒド分解に適した微生物とその分解酵素の機能解析・応用をしています。
教育・研究活動の紹介
生物全てに共通する酵素や生体膜、それらを構成する生体高分子の構造や機能、分析方法を物理化学的、生物物理的な視点で理解する講義を担当しています。研究活動では、遺伝子配列解析や遺伝子組換えを通して自然環境中に生息する細菌の生態を明らかにするとともに、有用物質の生産や有害物質の分解などの微生物機能を制御する技術への応用に取り組んでいます。
今後の展望
シグナル分子の受容体タンパク質を特異的に標識するプローブを用いて、自然環境中に生息している細菌同士や動植物と細菌の細胞間情報伝達機構の解明に取り組んでおります。微生物が合成する界面活性剤(バイオサーファクタント)の生産制御技術や、日和見感染症予防技術への応用を目指します。
社会貢献等
乳酸菌や納豆菌、日和見感染菌などの身近な細菌に関する出張講義を行います。
特許出願状況:ホルムアルデヒド分解細菌に関する特許(企業との共同出願)