研究概要
人が心を動かされる出来事にあったとき、それは視覚や聴覚などの五感を通して心に伝わります。当研究室では、「見る」「聴く」などの人の感性を定量的に評価し、感性を「伝える」工学、快適な環境を「つくる」工学を研究しています。
たとえば、伝統工芸品の結城紬は「ふっくらした柔らかい」「軽くて保温性がよい」「身体への馴染みの良さ」などの特徴があります。これらの特徴を感性・物理的・生理的に明らかにし、その特徴を伝達する画像・情報提示技術などを創出することで、市場や消費者に魅力的な結城紬を提案するシステムをつくっています(下図)。
また、深い癒やし「場」を実現するための「癒やしメディアの音再生システム」の研究や、片頭痛と音の関係を明らかにする研究をおこなっています。その他にも、空気の流れに対する人の感覚を生理的・物理的に解明することで、空気を媒体とした全く新しい感覚「空気覚」を創造・開発する研究なども進めています。
教育・研究活動の紹介
当研究室では、視聴覚を主体とした研究をおこなっているため、「人にやさしい」を「見やすい/読みやすい」「見つけやすい」「眩しくない」「わかりやすい」「印象が良い」「聞き取りやすい」など用途に応じて切り分け、心理物理学的手法を駆使してできるだけ定量的な評価を行う研究を展開しています。見え方や目立ち、感性的な印象評価は定性的と思われがちですが、当研究室では長年に渡る評価実験のノウハウの積み重ねにより、定量的な評価指標の提案が可能です。
今後の展望
ユネスコ無形文化遺産に登録された結城紬は、高級品・着物離れによる生産反数の落ち込みや、従事者の減少・高齢化が進んでおり、技術の継承が困難となっています。当研究室が提案する上述のシステムは、製造販売プロセスやネットショップで活躍される企業の方々と共に進めることができれば、インターネットを活用したPRや後継者発掘の手助けともなる技術です。また、実用化に向けた研究開発は、視覚・聴覚・触覚メカニズム解明へのヒントの宝庫ですので、多様な産業との連携を希望しております。
社会貢献等
特許出願状況・特願2015-035538(画像データ生成システム)