研究概要
【素粒子現象論】素粒子の種類と性質は「標準模型」にまとめられ,きわめて精密に実験結果を予言できることが示されています.しかし,それは究極の理論ではなく,背後にはより基本的な理論があると考えられています.その基本理論に迫るため,標準模型で説明できない現象を探求してきました.主に弱い相互作用におけるフレーバー物理を探求し,ニュートリノ振動におけるCP対称性の破れや荷電レプトンのフレーバー非保存過程など,自然界の基本的な対称性の破れを探り当てる可能性を研究してきました.
【集団運動・同期現象】物理学の数理的解析手法を用いて,さまざまな系での集団的な秩序の発生を解析しています.一例は局所相互作用する自走粒子系です.これを数理モデル化し,集団的な運動がどのような場合にどのように発生するのかを解析しています.また,ホタルの明滅のような周期現象を相互作用する振動子としてモデル化し,どのような同期振動が自発的に起こるかを探索しています.
【深層学習による打音検査の高度化】インフラや建築物の点検では打音検査が広く使われています.これは,対象物のコンクリートやタイル外壁をハンマーなどで叩いた打音から異常を探る検査です.この検査をAI技術でサポートする研究を行っています.研究では,打音データをニューラルネットワークで深層学習し,異常を見つける方法を検討しています.
教育・研究活動の紹介
学部1, 2年次の数学解析系科目を担当し,「微積分学」「線形代数学」「常微分方程式」「複素関数論」を教えています.講義では,基本的な分析手法の修得とともに,いかなる専門にあっても必要な主体的思考力の涵養を目指しています.研究室では,学生の専門性に配慮し,非線形現象やニューラルネットワークといった数理科学・情報科学分野の研究課題をとりあげ,数値シミュレーションを伴う分析を扱っています.単なる数値計算だけではなく,解析的考察と合わせ,現象の本質を洞察し,見通しよく分析するよう心がけています.理論物理学の手法には普遍性があり,一見異なる分野にも展開できる点が強みです.
今後の展望
教育では,学生の数学力と主体的思考力を育てます.研究では,ニュートリノ物理やフレーバー物理の実験的展開を見据えて素粒子論の研究を継続しつつ,数理・情報科学の研究課題を開拓していきます.
社会貢献等
高校生向けの出前授業やSSHへの協力,iP-Uでの講演などを行っています.また,打音検査の高度化について企業の方との共同研究も行っています.