研究概要
日本国内の酪農経営、肉用牛経営、畜産関係諸機関に対するインタビューやアンケート調査にもとづく実証研究を行ってきました。家畜伝染病の感染拡大、原発事故による放射能汚染、飼料価格の高騰といった阻害要因に対し、畜産経営の意思決定、ならびに地域内外の多様なアクターの戦略的な連携を通じ、畜産地域が持続性を回復するプロセスに焦点を当ててきました。具体的には、宮崎県における口蹄疫埋却地確保、那須地域における放射能汚染からの牧草地再生、福島県相双地域における畜産経営再開の実態を通して、復興の駆動力となる地域レジリエンスの醸成条件を探っています。現在は、環境負荷低減につながるアクターの行動に関する研究にも取り組んでいます。
また、小中学校の社会科、高等学校の地理歴史科の授業に導入可能なフィールドワークの体系化と教員研修での普及をめざしています。
教育・研究活動の紹介
①地理教育・防災教育の実践に必要な地理情報活用能力の育成、②現地を歩き、調査対象に深く接する実地体験に力を入れています。①については、地理院地図、jSTAT MAP、RESASなどのWebGISによるオープンデータ活用の作業を積極的に取り入れています。②については、基盤教養科目「自然と環境への扉(里山のサステイナビリティを考える)」(右の写真)において、棚田での折々の農作業や、耕作放棄地・林地の踏査を通じ、人間活動と里山環境の密接な関わりを理解させ、調査データや里山の持続可能性に結びつくアイデアを地域に還元する教育活動を継続しています。
今後の展望
環境や動物福祉への配慮と高品質な畜産物生産の両立の条件を、畜産経営者とともに探って行けたらと思います。また、地理情報活用技能を修得してもらう教職員サマーセミナーを開催したいと考えます。
社会貢献等
校内研修の指導助言、教員研修講師、放送大学面接授業講師、一般向けの「栃木の地形・歴史散歩」の講演、栃木県内高等学校での「総合的な探究の時間」の講演や授業、畜産関係団体が主催するシンポジウムの基調講演やパネラーなどの社会活動を行っています。