研究概要
大学に赴任して9年目ですが、以前在職した群馬県農業試験場(館林市)では普通作物(主に水稲・麦類)の栽培技術開発を中心に研究を進めてきました。県の試験場のコンセプトは、基礎研究というよりは現場で実用可能な応用技術の研究・開発が中心になっています。私も在職中一貫して普通作物の試験研究にたずさわってきました。主な研究テーマとしては、育苗(水稲)、施肥、地域に適合した新品種の選定、雑草防除、病害虫防除、生育診断、気象解析などに取り組んできました。
具体的な研究成果として、群馬県地元肥料メーカーとの共同研究により省力施肥を目的に肥効調節型肥料を使用した水稲新規肥料の開発・製品化を2000年に実現しました。また、群馬県平野部の気象や稲麦二毛作栽培大系に適合した水稲品種「あさひの夢」の導入を1998年に実現させました。さらに、東北地方を中心に導入・普及していた水稲育苗箱全量基肥技術を北関東地方の稲麦二毛作地帯へ導入する検討、技術改善を進めました。大学に来てからも引き続き鋭意研究を進めた結果、省力・低コストや環境保全型農業重視の流れの中で、現在では群馬県内をはじめ、関東地方などの温暖地にも次第に普及しつつあります。
このように現場に密着した実用化技術の研究・開発に軸足を置き、農家の栽培技術改善を通じて、収量・品質の向上や作業環境の改善を図り、農家所得の向上に結びつけて農業生産に貢献することを目的としています。
教育・研究活動の紹介
大学における農学分野での研究は、どちらかというと現場というよりは基礎的な研究が多いと思います。その中で私は、出身が県の農業試験場であり、上記のような経緯もあって、現場に密着した応用技術の研究が中心であり、出身県の群馬県のみならず学会活動を通じて全国の都道府県の公立農業試験研究機関はもとより国の研究機関、さらには肥料、農薬メーカーとのパイプを持っています。また、群馬県在職中は普及行政にも携わったことから、県内外の普及指導員、JA営農指導員、農家との付き合いも広く、これらのネットワークは研究室内に閉じこもりがちな大学の研究者とはひと味違ったスタンスで研究ができる点が最大の強みであると共に生命線といえます。
今後の展望
研究に関して特段先進的な設備を有しているわけではありませんが、研究遂行上必要な作物栽培生理、土壌、気象解析などの分野にわたる必要な研究調査等が発生した場合は、大学内はもとより学外の研究者と緊密な連携を取って研究に臨む考えです。そのことによって現地に軸足を置きながら、より詳細かつ綿密なデータ集積、解析が可能になり、大学ならではの一層高度な研究に発展していくものと考えています。
社会貢献等
これまでの地道な活動が評価され、近年は栃木県を中心とした市町村や地元企業、さらには大手企業から共同研究の依頼が増えつつあります。年々業務が多忙になる中、これらの全ての要請に対応することが難しい状況ですが、可能な範囲で協力できるように努めてまいります。