研究概要
農産物の生産から食料品の消費までの流れを総合的に把握する「フードシステム」的視点を軸に、農業、食品産業、消費者の各役割や相互関係の変化、課題とその解決方法について、国際的な視点と地域的な視点を複合させながら総合的に研究しています。
近年のフードシステムは、国際化の影響も受けながら、ごく少数の大手主体が主導する下で、効率性や利益を優先するシステムに変貌しています。この動きの中で、国内農業、特に条件不利性の多い農山村地域の地域社会·経済の縮小が顕著になっています。ただし農山村地域では厳しい状況にある一方、農産物直売所、農村レストラン、農産加工施設、集落営農など地域活性化の新展開も見られます。先進事例の分析の結果、(1)地域固有の伝統・文化・資源の見直し、時代に合わせた磨き直し、(2)高齢者、女性などを含む地域内人材の主体的な活躍の連鎖、(3)地域外との交流の増加(応援・共感消費、関係人口)などの多くの可能性を秘めていることがわかります。
教育・研究活動の紹介
机上の理論、学問だけでなく、実社会や現場とのつながりも強く意識しながら、教育·研究活動を実践しています。例えば授業では、学生に対し、食と農に関わる問題を身近な問題としてとらえ直してもらうことから始めています。そのうえで、関係する理論や現状について、講義を中心に学んでもらいます。そして最後には、自らも実社会·現場とのつながりを保有する当事者の一員であることを自覚し、何ができるのか、何をすべきなのかを考え直してもらうことを目標としています。
今後の展望
国際的なヒト、モノ、カネ、情報の急速かつ大きな流れに受動的に翻弄される場面が増えています。そうした状況だからこそ、自ら主体的にヒト、モノ、カネ、情報の流れを再編している実践例は貴重だと思います。そうした事例の分析を通じて、フードシステムと地域社会·経済の持続的発展を両立させる可能性や課題についての研究を深めたいですし、研究以外でも現場のこれからの実践に関わっていきたいと考えています。
社会貢献等
市民講座や研修会の講師、各種審議会の委員などを通して、さまざまな現場から多くを学んでいます。
また、自ら得た知見を現場へフィードバックできるように、今後も頑張りたいと思います。