研究概要
人に感染するウイルスが存在するように、植物に感染するウイルスも存在します。しかしウイルスは微小で肉眼では見えないので、PCRやLAMPなどの手法により、ウイルスの存在を簡易に検出するシステムづくりを行っています。また、日本のみならず世界各国で植物ウイルスによる被害は発生しています。特に熱帯地方ではウイルスを媒介する虫が多くいるため、東南アジアで発生しているウイルスについての調査を行っています。また、病気を引き起こすメカニズムは不明な点が多いため、植物とウイルスの間にある関係を明らかにすることを目指しています。
教育・研究活動の紹介
未知の植物ウイルスの性状の解明や、ウイルス検出·防除手法の検討などを行っています。富山県で発生し、長年その性状が分かっていなかったチューリップのウイルスについて配列を解読し、これまでに報告されているどのウイルスとも異なる新種であることを明らかにしました。また、栃木県で発生しているイチゴに感染するウイルスや、インドネシアのナス科やウリ科植物に発生するウイルスの同定を行っています。
今後の展望
分子生物学が発展し多くのウイルスが発見されていますが、未発見のウイルスも多くあります。これらについて明らかにするとともに、現場でのウイルス病発生を速やかに発見することにより被害の軽減に繋げたいと考えています。また、ウイルス感染した植物を治療することは困難であるため、感染しないようにする防除が重要です。そのため、ウイルス感染しない·しづらいような植物品種の利用や、病徴を激化させない弱毒ウイルスの利用、植物のウイルス防御機構を活性化させるようなバイオスティミュラント利用などを念頭においた基礎・応用研究を進めたいと考えています。
社会貢献等
宇都宮大学グローバルサイエンスキャンパス(iP-U)の担当教員であり、毎年数名の高校生を受け入れて研究指導を行っています。また、小中学生向けのオンライン実習の経験もあります。さらに、農業関連企業との共同研究契約を結び、植物ウイルスの不活化実験を行っています。ウイルス病のみならず、菌や細菌病などについても相談を受け付けています。