研究概要
細胞外マトリックス(ECM)は、動物組織の細胞の外部のことを指します。近年の多くの解析により、ECMは単に細胞の外にある環境としての意味だけではなく、細胞機能の調節等の生理的な現象に深くかかわってきていることが明らかとなっています。特にコラーゲンはECMに存在し、生体内で最大量のタンパク質として知られています。豊富なタンパク資源である一方、コラーゲンは皮膚、骨、軟骨といった非可食部に存在するため、食品加工過程で廃棄されていました。近年、コラーゲンの分解物などが様々な生理機能を発揮する事が示されてきており注目されています。我々は、コラーゲンを機能性食品素材として見直し、それを摂取した際の消化吸収動態の解析や、皮膚や神経などの組織にどの様な影響をあたえるか解析しています。これらの組織には、主に再生時に大きな影響を与えることが判明してきており、現在体性幹細胞を中心とした解析を行っています。また、コラーゲンにはプロリンが水酸化された水酸化プロリンという特殊なアミノ酸が多く含まれており、抗酸化をはじめとしたさまざまな視点から機能性食品素材として、水酸化プロリンの利用の可能性を探索しています。
教育・研究活動の紹介
本研究室では、コラーゲンというタンパク質に注目して研究を行っていますが、摂取後の消化吸収動態解析、in vivoにおける生理活性評価、幹細胞などの培養系を用いたin vitroの実験系などを組み合わせ、包括的に解析を行っています。即ち、一つの注目する食品成分や生理活性物質を定めれば、多様なレベルでの解析ができる点が特徴です。主にタンパク質やペプチドの生理活性評価を行っていますが、LC-MS、二次元電気泳動などを行い、様々な物質の代謝変動や定量解析が行える点も大きな強みとなっています。食品や薬剤として興味の対象があった場合、入り口から出口まで評価できるのが大きな利点と考えています。
今後の展望
これまでの研究より、コラーゲンをはじめとした生体内に多量に存在する物質は、従来知られていた栄養機能に加え、比較的穏やかながらも個別の生理活性を有することが明らかになってきています。コラーゲンも含め、食品の主要成分が持つことが想定される、“穏やかだが、大量に存在すれば一定の強度の生理活性を示す”点について、今後も継続的に解析を続け、今後の機能性素材の開発に向けて新たな情報が発信できればと思います。
社会貢献等
宇都宮市健康危機管理委員会委員、栃木県衛生福祉大学非常勤講師、IFC栄養専門学校非常勤講師、日本バイオ技術教育学会試験問題研究委員会、コラーゲン関連企業との共同研究