研究概要
食品には免疫系に作用し、アレルギーを軽減したり感染を防いだりする免疫調節機能があることがわかってきました。アレルギーを起こしにくい食品の開発や免疫の働きを強化する食品成分の研究を行っています。腸管は栄養を消化吸収するだけでなく、口から侵入した病原体から生体を防御する免疫器官でもあり、その働きが巧妙に制御されています。食品は腸管の免疫系に作用することで、アレルギーを軽減したり感染を防いだりする免疫調節機能を発揮します。私の研究室では健康で質の高い生活を送るのに役立つ食品の機能を明らかにすることを目標に、アレルギーを起こしにくい食品の開発や免疫のはたらきを強化する食品成分の解析を行っています。主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリンを超高圧下で酵素処理することによって、食物アレルギーの反応が起こらないように分解するとともに、経口免疫寛容が誘導できるかどうか検討しています。また、食物アレルギーを改善するような食品成分の探索も行っています。
教育・研究活動の紹介
食物アレルギーなどの複雑な免疫のはたらきを理解するために、実験動物であるマウスだけでなく、多様な免疫細胞の細胞株も用いて、分析化学、細胞生物学、分子生物学などの技術により多面的に研究を行っています。マウスに鶏卵や牛乳のアレルゲンを摂取させることで、消化管症状や体温低下などのアレルギーの症状を誘発することができる食物アレルギーモデルを確立しています。また、マウス個体から様々な免疫細胞を調製·精製し、培養する技術を有しています。フローサイトメトリー、ELISA、免疫組織染色といった抗体を利用した解析も行っています。
今後の展望
どのような加工条件が、食物アレルゲンの低アレルゲン化に最適なのかを明らかにするとともに、食物アレルギーそのものを改善していく方法を開発していきたいと考えています。また、身近にある食品素材から、アレルギーを改善したり、免疫の機能を強化したりする食品成分を探索して、その作用メカニズムを明らかにしていきます。
社会貢献等
免疫調節機能をもつ食品成分や低アレルゲン化食品の開発に関連した企業活動と連携していきたいと考えています。