研究概要
私たちの消化管の中には多くの微生物が住みついており、その活動が発がんに関わることもあります。例えば、胃内にピロリ菌が住みつくと胃がんのリスクが高まることからその除菌が推奨されています。しかし抗生物質の多用は耐性菌を生むことになり問題となっています。そこで、ピロリ菌が自身の生存のために作っている酵素の働きを抑えるような成分を野菜中に見出し、食事による胃がんリスクの低下につなげたいと考えています。
また、腸内細菌が自身の生存のために作っている酵素が大腸癌のリスクを高めることも知られており、同様に野菜中の成分で酵素の働きを抑えて、食事による大腸がんリスクの低下を目指しています。
さらに、腸内の胆汁酸を吸着することでコレステロールを低下する医薬品があることに着目し、そのような食品成分の探索に取り組んでいます。
一方で、食品加工場の廃液から機能性成分を回収し食品素材化することで、持続可能な食品生産に資する研究にも取り組んでいます。
教育・研究活動の紹介
一般に、食品由来の機能性成分の吸収率は良くて数%と非常に低いものです。多くの研究はその吸収率を上げることを目指していますが、私たちの研究では吸収が悪いということは腸内に高濃度に存在すると考え、腸内細菌や腸内有害成分との反応に着目して研究を進めています。
また、アントシアニン(ナスやワインの色)、クロロフィル(野菜の緑)といった消費者に訴求力のある色素成分をうまく利用できるよう、新たな機能性の解明や、それを活かすことのできる加工法や廃棄物再利用法に取り組んでいます。
今後の展望
調理、加工法と機能性の関係に着目することで、栃木の伝統食である「しもつかれ」の新たな可能性を提案できることを目指しています。また、廃菌床など農業生産の場における廃棄物の機能性素材化にも取り組みたいと考えています。