研究概要
量子力学に基づいた材料物性の理論的研究を行っています。半導体デバイスの特性は、材料物性に大きく左右されることから、物性研究は重要な役割を担っています。そこで、第一原理計算と呼ばれる計算手法を用いながら、新たな評価・測定方法を開拓している実験グループと共同で、光学応答などについての研究を進めています。
量子もつれ状態は量子技術の実現に重要な概念で、特に光による量子もつれ制御は外場による物性制御の観点からも今後は重要になっていくと考えられます。このような分野の研究はまだこれからという段階ですが、簡単なモデルを使った計算により、材料設計への足掛かりを得ることを現在は狙っています。
主な研究手法はスーパーコンピュータを用いた数値計算です。大規模の計算を実行するため、並列計算が重要な技術となります。さらに通常の方法では規模が大きすぎて計算できない問題を取り扱うため、ベイズ推定によって波動関数の形を決定する新しい手法についても研究を進めています。
これらの計算で得られたデータは、フーリエ変換・特異値分解などの手法を用いるのが通常の方法ですが、さらに量子情報理論からの知見によって多角的な解析を行なっています。
教育・研究活動の紹介
基礎からの積み上げが重要な研究なので、知識・スキル(プログラミング)の習得に時間をかけ、じっくりと研究に取り組むように心がけています。本格的な研究に取り組むまでには時間がかかりますが、教科書・論文によってじっくりと勉強しながら、学生が自分の研究の位置づけをしっかり理解できるように進めています。
今後の展望
材料物性のわずかな「ゆらぎ」を光によって制御し、物質の状態を大きく変化させる現象を解明し、そのような変化を巨視的なスケールで引き起こすことのできる材料設計を進めていこうとしています。
社会貢献等
量子技術は未来の技術であり、今は身近な存在ではありません.しかし、近い将来にどのような形でわれわれの目の前に現れるのか、様々な研究が進められており、期待されている技術でもあります。われわれはこうした研究の基礎的な事項について研究するとともに、何が重要なポイントなのか、あるいはどういう事柄を今のうちに知っておいた方がいいのかを考えながら、この技術の持つ価値を伝えていこうとしています。