研究概要
本研究室では、短稈化以外の倒伏抵抗性向上を目指して、イネにおける植物体物理特性の改良に関する研究を行っています。物理特性には下位部の支持力と強稈性といった2つのターゲットがあり (図)、さらにこれらの改良には最大強度の向上あるいは強度の劣化抑制が必要となります。これまでの研究において、下位部の支持力強化や上位部稈の強度劣化抑制等の物理特性に関与する遺伝的要因 (QTL) を同定し、その機能を解析してきました。これらの研究によって、草丈や稈径等の形態を変える以外の倒伏抵抗性を向上させる方法が明らかとなり、同定したQTLを利用した品種育成も期待できます。
教育・研究活動の紹介
作物の農業形質改良には、単に目的形質のメカニズムを探求するだけではなく、生産性や品質等の実用性まで想定した多面的な評価が重要です。そして最終的に品種育成を行う際には、遺伝的要因を同定した効率的な育種法も必要です。本研究室では圃場での形態学的特性や栽培性の解析から、分光光度計を用いた様々な成分分析や生理学的解析、植物体や収穫物の品質等を評価する物理試験、そしてDNAマーカーを利用した遺伝的要因の解析まで、圃場レベルから個体レベル、そして遺伝子レベルの実験を実施し、目的に対して総合的な解析を行っています。
今後の展望
本研究室の研究方法は主に汎用性のある実験法を用いて構成しています。現在は倒伏抵抗性をターゲットとした研究を主に行っていますが、同様の方法を用いてその他の栽培性や食味関連形質といった作物の重要な形質を対象とした研究の実施も計画しています。さらに、見出した遺伝的要因については環境要因 (圃場環境や栽培方法) との関係を解析して実用性も評価していく予定です。
社会貢献等
米生産における栽培や品質などの総合的な評価に関する相談・協力。