研究概要
土壌は、固・液・気の三相から成る、水分・ガス・熱の保持・輸送媒体であり、土壌中および土壌を介した生物生産活動を支えています。例えば、固・液・気の体積比にして5:2.5:2.5程度といわれる植物生育の好適三相条件や、一日当たり数mm程度とされる地下水の涵養、10アール当たり数10kgオーダーとされる植物への可給態養分の保持など、食糧生産に関わる自然資源の多くが、透水性や通気性、保水性をはじめとした、土壌の持つ物質保持·輸送機能に依拠しています。
当研究室では、土壌中の物質賦存量や土壌の持つ物質保持·輸送性を対象として、これらの計測による実態解明や、土壌中における水分やガスの動態の評価·予測に向けたモデル化に、取り組んでいます。
教育・研究活動の紹介
これまで、以下の課題に取り組んだ経験を持ちます。
(1)農地排水により乾燥化した湿原における原植生の再興を目的とした、トレンチ潅漑の実施、ならびに、地下水位上昇領域·必要潅漑水量の予測のための数学モデルの提案と、これらの野外における実測による検証。
(2)高有機質土壌を対象とした通気性の定量、および、土壌有機物分解·CO2の大気への放出量と、土壌通気性向上·CO2の大気への放出能との間の、正帰還的関係の示唆。
(3)農地連鎖系集水域における地下水位分布および地下水輸送速度の、土壌透水性·保水性パラメータに基づいた、有限要素法による解析。
今後の展望
土壌中の物質賦存量・物質輸送速度を対象とした、野外・室内試験の設計と実践、理論的・数値的解析による定量評価、予測等への取り組みを続ける他、今後、これらの応用先として、生物生産の現場としての土壌環境の良否の評価や、維持・改善手段の提案を目指したく思います。